深淵の闇の中から

 この世界には奇妙な本がある。それは裏も表も黒一色で彩られた一冊の本だ。人々はそれを〝黒の予言書〟と呼んでいて、人目に付かない場所に大切に保管されている。〝予言書〟と呼ばれる所以は、その本に記載されている内容の所為だろう。確たる証拠などありはしないが、「有り得ない」と言うにはあまりにも現実味を帯びているのだ。
 それは、様々な事象が綴られているかのように、その世界に実在している者や場所が詳細に書かれている。複数の可能性をも書き出し、とある一つの結論に辿り着くのだ。
 〝――近いうち、または遠い未来。世界は終焉に呑まれるだろう〟と――。