――淡い金色の髪が美しい女だった。白魚のような指先が綺麗な女だった。
「あまり野蛮なことはしちゃ駄目よ」
自分よりも年下であろう女は翳していた手をそっと自分の元へ引き寄せると、身を翻して「さようなら」と呟いた。その様子はまさに「冷たい女」のように見えたのだが――彼にとってはそれすらもまた愛しいものでしかなかった。
淡い金色の髪に長いスカートを美しく着飾った、荒れた様子もない淑女。意味ありげに目元に包帯を巻いていながらも、その足取りはしっかりとしていて、目の前が見えていると言っても過言ではないほどだった。
「…………可憐だ」
海の如く青い瞳を瞬かせながら彼――ロレンツ・ヴァルメルトはそう呟いたのだった。