人の波の行く先に

 ――夢を見ていた。それはそれは懐かしく、とても愛しい夢だった。

 太陽が落ちて光がなくなって、水を得た魚のような心持ちで土を踏むのは随分と心地がよかった。夜の心地よさは何にも匹敵することがないのだろう。人目が少ないことによる解放感、世界には自分だけしかいないという妙な優越感。静まり返った外に響くのは梟の鳴き声だけで、この誰にも邪魔されることのない静寂は確かに自分のものだったのだ。

 ぱちぱちと音を鳴らして光るそれは手のひらにも満たないほどで。日中の太陽に比べれば遥かに可愛らしく、忌々しくもない。それをぼんやりと見つめていると、微笑ましげな声が聞こえたのだった。