俺の部下の愛が重い5

 雨が上がったあとの朝は格別だった。朝露が葉の先から滴る様子は、新しい一日の始まりを感じるような特別なもののように思えていた。朝日は昼間のそれとは違い、いくらか過ごしやすく、心地が良い。――その朝日が窓から差し込むものだから、男はゆっくりと目を覚ます。久方ぶりに熟睡を得られたようで目覚めは良く、心なしか体は軽く思えた。顔を上げればノーチェがまだ健やかに眠りに就いているのが見える。普段の好戦的で挑発的な表情は少年のようにあどけなく、胸の奥で小さな高鳴りが起こったような錯覚に陥った。
 寝ている姿を見るのはこれが初めてではないが、妙に新鮮味がある。彼は男の体を抱き枕代わりにしている所為か、クレーベルトは体を起こせずにいた。――それに対する不満はなかったものの、体の調子を思えば現状はあまり良いとは言えないだろう。

 ここ数日、クレーベルトは忙しさのあまりノーチェと過ごすことは全くなかった。彼も男の邪魔をしないようにと努めていた所為か、互いにその事実に触れることはなく、夜もそれぞれの部屋で眠る日々が続いていた。それこそが本来の姿であり、何の問題もないのだが――、それこそが男の不調の原因でもあった。
 困ったことに、クレーベルトはノーチェがいなければ熟睡できない体になってしまったのだ。
 人肌を覚えてしまった体は独りの寂しさに耐えられず、眠りに就いたとしても決して熟睡できたとは言えないほど浅い眠りだった。目覚めて体を起こせば疲労感は変わらず、瞼も重いまま。それでも意地で体を動かしてみれば鉛のように重かった。
 その感覚が、一夜明けたこの日だけは存在しなかった。

 困ったな、と男は小さく呟く。その声が聞こえたのか――、ノーチェが身動ぎをしたあと、眠たげな目をこじ開けてクレーベルトに「……はよ」と一言だけ告げた。