咳と暖炉と模様替え

 ――こんなことをする筈ではなかった。
 息が詰まるような気分の悪さ。ぐらりと揺れる視界。寒気とは裏腹に熱を増す頬――赤く染まる手のひら。鼻につく鉄の香りが生臭くて、思わず顔をしかめたような気がする。
 ――だが、それも目の前にある恐怖に比べれば、気にするほどのものではなかったのだ。