来客の訪問、煽る言葉

 雨足が酷くなった。いずれ降るだろうと思っていたそれは、時間が経つ毎に強さを増している。肩や頭を叩き付けるその粒は冷たく、よりいっそう男の機嫌を悪くしていった。流石の雨には街中も静まり返って、見当たるのは黒い服を纏った終焉ただ一人だ。
 男は曇天を見上げていると、無意識のまま眉を顰め、小さく口を開く。「雨は嫌いだ」と。
 いやに重くなったコートのフードを外し、濡れた手袋をはめたまま、濡れて鬱陶しい前髪を掻き上げる。心なしか酷く怒りに満ちているような瞳がやけに印象的だった。

「……面倒だな」

 終焉はそう呟くと、足早に屋敷へと歩を進め始めた。