――〝永遠の命〟というものの存在を信じるだろうか。それは文字通り、決して「死ぬ」ことのない命だ。何の負荷ももなく、ただ対象に死ぬことのない永遠を与えるだけのもの。寿命という概念を忘れさせ、仮に生死に関わるような大怪我を負ってしまったとしても、たちどころに――何事もなかったかのように体が回復するのだ。
勿論痛みはある。痛覚というものを失うわけではないので、極力怪我を負う事態は避けるべきだ。その他五感は確かに存在していて、一般人ともまるで変わらない生活を送ることは可能である。
だが、その命の存在は証明することが難しく、手当たり次第に何かを壊して回らないと発見できないのだ。〝永遠の命〟が宿るのは動物だけとは限らず、草木や無機物もまた宿る可能性がある。命が宿る条件など理解されているわけもなく、宿る原因さえも解明されていない。
〝永遠の命〟が宿る対象はたった一人、もしくはひとつ。見極める方法は「殺す」か「壊す」ことで、翌日――または直後に跡形もなく、傷ひとつも残らなければそれが〝永遠の命〟を持っているということになる。
――この話はルフラン中に広まっているわけではない。街を支配するという〝教会〟でさえもその情報を知るのはほんの一握りで、話を信じているのは一割にも満たないほど。結局〝永遠の命〟はただのお伽噺として僅かに知られているのだ。