報われないとばかり思っていた。――いや、実際はその通りなのだが。
何度も同じ目線から夢を見て、何度妬ましいと思ったことだろう――。
夢を見ていた。終始客観的な夢だ。愛に飢えた生き物に、身に余るほどの愛を注ぐ人間の夢だ。そこに男はいなければ、男が知る彼もいない。ただ、見せ付けるように繰り返し見る光景に、男は次第に「羨ましい」と思うようになっていた。
羨ましい。羨ましい。どうして私は愛されないのだろう。
その場に項垂れて、拳を握り締めること数十回。目を閉じ耳を塞ぐこと数回。妬ましいと思うこと数時間。
気が付けば夢から覚めて、見慣れた天井を見つめて溜め息を吐くのが日常となっていた。
そんなときに見掛けてしまったものだから、男はあの短時間で何度も自分を疑った。
男の知る彼は、何故か奴隷になってしまっていて、見窄らしい姿をしていた。平均以下の体重に、傷だらけの肌は最早似て非なる者ではないか、とさえ思うほど。――しかし、見れば見るほど彼が男の知る者と同一であることを本能が囁いて、堪らず手を出した。
彼は男を知りはしなかった。――それでも構わない。愛されずとも、奴隷などという枷から解放してやりたいと思った。
これを逃せば一生巡り会えないかもしれない。
最後の望みを掛けながら、男は彼の身を匿うことにしたのだ。