俺の部下の愛が重い2


 ――思えば少し、強引すぎたかとノーチェは反省をする。弱り切った男を押し倒し、自分の欲をぶつけるのは満たされるようで心地よかったが、それで男が救われたのかなど、考えたこともなかった。その翌日は確かに気まずい雰囲気が流れたものの、心なしかクレーベルトの顔色は良く、それ以来自暴自棄になることはなくなった。
 しかし、男が抱える秘密を、彼は未だ打ち明けられたことがない。

「難しいもんだな……」

 サク、と音を立てて彼は何度目かのクッキーを頬張る。男が選んだという自前の洋菓子は、流石甘いもの好きが選んだというだけあって癖になるような美味しさがあった。程よい甘さに、香ばしい生地。どこで調達したのかは分からないが、ノーチェも考え事をするには程よい甘さだと実感した。
 男のように頭が良いわけではない。それを自覚しているノーチェは、自分が今できることは何かを懸命に考える。不思議なもので、普段は小難しいことを考えるような性格ではないのに、クレーベルトに関する思考は何よりも頭が働いた。
 男の秘密を暴くにはどうすればいいのか。信頼を得るにはどうしたらいいのか。あの表情をさせないためには、どこまで従順に動き続ければいいのか。――自分だけを愛してくれるためには、どういう立ち回りをすればいいのか。
 こんなにも愛しているのに、男は未だに多方面へと平等な愛情を振りまいている。まるで、ノーチェの気持ちが十分に伝わっていないかのように。

 閉じ込めてしまえば体中を支配する愛が、少しでも男に伝わるだろうか。
 四六時中あの体を貪っていれば、嫌でも理解するだろうか。

「違うよなあ……もっと純粋に……俺だけを見てもらうためには……」

 ううん、と彼は唸り、頭を掻く。ノーチェの悩みは誰に届くこともなく、彼はたった一人で悩むこととなっていた。